ユーステラBOOTHの総売上・VRC向けアバターの外注方法ほか4本立て特別号[VRChat Advent calendar2022-DAY14]
記事を書いた人(VRChatプレイ時間12,000時間弱)
しらとりこよみ Twitter@ko_shiratori
当記事はがとーしょこら様主催のVRChat Advent Calendar 2022 DAY14の記事となります。
今回は長文となることが予想されるため好きな場所へジャンプできる目次をご用意いたしました。
また、スマホからだと非常に読みづらかったためPCでの閲覧を推奨します。
総文字数15,036字になります。
目次
序章 まえがき
1章 アバターの外注方法と売上
2章 キャラクターの育て方と媒体
3章 会社の建て方と向いている人
4章 アンチファンに対する対応
5章 あとがき
まえがき
VRChat Advent CalendarにはVRCを始めてから毎年参加しております。
2019-2020-2021と書いて今年で4年目です。会社を創業したのも同時期の2019年です。
年を締めくくるイベントの一つとして自分の中で定着しており、1年を振り返るにはもってこいの企画です。
さて、今年は例年に増して色々あった年でございました。
音声作品の作り方とか書いても良かったのですがこれはあくまでも”VRChat”アドベントカレンダー。
目次の通りに今年の記事はVRChatに関する記事4本建ての大盤振る舞いで提供してまいります。
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1章 アバターの外注方法と売上
まずは事前アンケートで[全部書く]の選択肢を除き1番票数が多かったアバターの作り方と売上についてです。
フィーちゃんは関わっている方が多く、説明が煩雑になる可能性がございますのでここではリルク君を例に進めていきます。
前提条件
今回の作り方はあくまで1例に過ぎません。
また、当記事は2022年作成のため情報が古い場合もございます。
企画者は特別な知識な能力を持たず、全ての工程を外注にて行う想定で書き進めていきます。
私自身はアバター制作に関する特別な知識を持ちあわせていないため、間違った箇所等もある可能性がございますのでご了承ください。
ここでは販売想定で記事を書き進めていきますが、ワンオフ想定であっても特に違いはないのでどちらのケースでも参考になれば幸いです。
1:二面図・三面図を用意する
まず最初に用意するのは二面図もしくは三面図です。
二面図の場合は「前と後」の2パターンが見えれば問題ないです。
(※前と横の二面図の依頼などはしないように注意します[1敗])
キャラクターデザインの仕様書はイラストレーター様によって細かい指示があった方がいい・全部こちらに任せてほしいなど違いがございます。
具体的なイラストがあった方が嬉しい人だったり、具体的なイラストがあると先入観で引っ張られてしまうから欲しくないと言う人もいます。
最終的には慣れですが、イラストレーター様とご相談しながら進めていくと良いと思われます。
そのため、イラストの絵柄が好きだったりコンセプトに合っているからといって必ずしも良いマッチングになるとも限りません。
ソルシエル シリーズにつきましてはキャラクターデザインの全てをだるだなさん(Twitter:@jonhamu)に一任しております。
ソルシエルの仕様書としては「VRChat向けアバター用のデザインで、どれか一つでも好みのアバターに出会えるように多種多様なコンセプトの可愛い感じのキャラデザ」でご依頼しております。
また、3Dに起こすための三面図の場合の注意点として「3Dに書き起こした際に破綻しやすい箇所はないか・物理機的に再現できない箇所はないか」をチェックする必要がございます。
リルクくんについては原案デザインを優先するために多少無茶なお願いをしております。
そのため、キャラクターデザイナーさんには最低限の3D知識があるとなおのこと良いです。またVRChat向け3Dモデルを作成される場合はVRCに関する知識とログインできる環境もあると良いです。ない場合は3Dモデラーさんと打ち合わせながらをお勧めします。(∞敗)
完成したリルクくんの二面図がこちらです。
2:3Dモデラーさんに3Dに書き起こしてもらう
次に3Dモデラーさんに3Dに書き起こしてもらいます。
3Dモデラーさんとキャラクターデザイナーさんが同一の場合は1と2が同じ人になります。
3DモデラーさんがVRChatを未プレイの場合は、アカウントを取得していただくことを推奨します。
また、可能であれば報酬に上乗せする形でVRヘッドセットをお渡しするのも十分に良いと思われます。
これはUnity内での挙動とVRChat内での挙動(特にフルトラッキング)は大きく異なるためでございます。
3DモデラーさんがVR機器を持って居ない場合、写真や動画のみで判断する必要が出てきます。
3Dモデラーさんの目線(Unity)から見れば問題なく動いているけど依頼主からの目線(VRChat)で見れば挙動が異なって見えてしまいお互いの意見に食い違いが起こってしまいます。
また、VRChatにはリップシンクシェイプキーの追加やVRC向け法線調整・フルトラ適性・ポリゴン制限・ボーンの置き方など通常の3Dモデル制作に必要がない場合もある追加仕様がございますので併せて注意が必要です。
著者が浅薄のためここでは詳しく語れませんが、作成方法につきましてはブラウザ検索すれば無限に出てきますので、その記事が最新情報で間違い無いかだけチェックして参考にしていくと良いと思われます。
これは全ての職種に言えますが、3Dモデラーさんによっては完成するまで見せたくないという方もいらっしゃいます。
私の場合は話し合いながらマイルストーンを設定してこのタイミングで一度見せてとお願いしますが、これもまた3Dモデラーさんとご相談ください。
3:テクスチャの作成
基本的に2と3は行き来しながら進行されます。
テクスチャについては特に書くことがないのですが、VRChat3Dモデルは改変前提で販売されることが多いので改変しやすいようなレイヤー分けにすると良いかもしれないです。
細かすぎても使いづらいですし大雑把すぎても改変したくない箇所まで色が塗られてしまい困ることになります。
色改変用レイヤーはPSDに保存しておくのはもちろんPNGで別途書き出しておくとpsdを開くことができないお客様へも対応ができて良いです。
一見面倒に思われるかもしれないですが、色変えPNGは更新するリスクが少ないので作業の息抜きに出力するのをお勧めします。
また全てのデータに対して言えますが、特にテクスチャデータはお客様も多用するため分かりやすいデータ名にすることをお勧めします。
こちらにつきましては3Dモデラーさんとテクスチャ担当さんからご提示いただけると思いますが表情のシェイプキーを幾つ実装するのかどんな表情を実装するのかも決める必要がございます。
完成した時にどう言う表情を組み合わせ使いたいかなども想定しながら考えていくと良いと思われます。
リルクくん追加髪型では髪型変更のブレンドシェイプキーやメッシュ込みの髪色差分を同梱しています。
完成した3Dアバターがこちらです。
ここでは二面図から一気に完成まで飛んでいますが、実際には3Dに起こした際の違和感や2Dイラストの細かな再現忘れなどイラストレーターさんと3Dモデラーさんの綿密な打ち合わせと修正を繰り返しての完成となります。
また、3Dモデリングで難しい箇所を2Dテクスチャで対応したり、逆も当然ございます。
3:PB(PhysBone)セットアップ
次に行うのがPBセットアップです。
PB対応についてもテクスチャ同様特に書けることはございません。
3Dモデリングやテクスチャと違い、PBはVRChat独自機能のためご依頼先につきましてもVRChatに関する知識を多く持っていると思われます。
実際にPBやってみたらどう頑張っても破綻を回避できないなどの問題が出てきます。
フルトラの予測しうるすべての動きに破綻しないように対応するなんてのは完璧な陰影をつけた1セント硬貨と同じくらい無謀な話です。
予防策としてはやはり3Dモデリング段階でPB担当者さんと3Dモデラーさんとイラストレーターさんで綿密な打ち合わせが必要になってきます。
ロールバックできない段階まで制作が進んでしまっているならば、妥協点を探すかコンストレイント/補助ボーンなどで対応してく形になります。
余談になりますが「持続可能なアバター製作」という一点に関して言えば、PB対応が始まった時点でVRChatアバターの製作をやめるべきだったと考えてます。
DynamicBoneと違い参考記事が上がってるわけでは無いので全てが手探りで進んでいきます。
また、すべての既存アバター・衣装にPBを再設定していくとなると新技術の為もあり異常な費用がかかってきます。
PBを再設定すれば別の箇所で競合エラーが発生するので修正のための修正費用もまたかかってきます。
外注である以上は費用が発生している為、こういうことできるんじゃないか・これ実装するにはどうしたらいいんだろうかという実験的な挑戦も難しくなります。
リルクくんの場合はDynamicBoneでは実装できなかったほっぺが揺れるボーンなどを実装しております。
4:パーティクル作成
私はPBが完成したこのタイミングでパーティクルを作成しております。
PBの前だとデータ変更の可能性がございますし、VRCセットアップの後だとExpressionメニューの登録など二度手間が生じます。
パーティクルの作成についても特に書くことはないです。
アバターにパーティクルをつける場合つけられるだろう箇所・機能はいくつかございます。
例えばフィーちゃん+DLCですと「背中の羽・歩いた時の軌跡・ヘアバッジが光る・ケーブルから火花が散る・目が光る」などなど。
ここにこういうのあったら綺麗なのにというパーティクルならでは再現可能な案をまとめてパーティクル担当者に渡してみると良いと思われます。
リルクくんの場合はパーティクルでマイクが現在オンなのかオフなのかを判別できるギミックを搭載しております。
5:VRChat用セットアップ(Expression機能の作成等全てを含む)
最後の工程です。
VRChatセットアップをしていきます。
こちらもVRChat独自機能のためご依頼先につきましてもVRChatに関する知識を多く持っている前提で進めていきます。
VRChatセットアップをする際に依頼主から指定する箇所で言うと一番はExpressionメニューについてと思われます。
リルクくんでは下記のExpression機能を実装しております。
此の程のアバターには多くの機能が実装されておりますが、多ければ必ずしも良いわけではなく個人的にはメインメニューが2ページ以内に収まるくらいが理想的だと考えております。
また、アバター改変の際にメモリ不足になる可能性を考慮してExpression機能ありとなしの2パターンprefabを用意しておくと良いかもしれないです。
表情についてもハンドトラッキングに設定するテンプレートをここで確定する必要がございます。
VRCセットアップ担当さんに任せてもいいと思いますが表情設定は教われば誰でもできますし、何よりアバターの第一印象となり得るのでご自分で設定されることをお勧めします。
注意点としては右手と左手で表情を競合するように設定するかしないのか、目を閉じた表情の時に瞬きしないように競合設定をする(∞敗)などになると思われます。
よく使われる表情にするのも当然良いですが、そのアバターにあった表情かどうかで判断するのも時には良いと思われます。
リルクくんの設定はタクティカル男の娘(山犬) のため、それに合った表情を設定しております。
また、サンプルアバターのアップロードにつきましてはちゃんとしたアバター画像はもちろんのことプロフィール文章も用意することをお勧めします。
アバター画像だけでは伝えきれない作成者名やリリースセール情報など記載できることはたくさんあるのでぜひ記載することをお勧めします。
また、アバター画像にはショップロゴを載せておくとよりブランド性が高まり検索しやすくもなります。
ここまで読んでくださったアバター製作者様は「こんな簡単に作れない」「ここの認識間違ってる」「実際はもっと細かい調整や苦労がある」などいろいろ思われているかもしれないです。
当記事は依頼主から見た目線でどう言う風にご依頼をして作成から完成までもっていくかをまとめた記事になります。
また、こちらの記事は同じメンバーで5体目のアバター製作という製作陣のコミュニケーション的にも製作フロー的にも慣れた状況での説明となります。
ご依頼先によってはこれだけの情報じゃ作れないもっと情報よこせとなるかもしれないですがあくまで一例としてお納めください。
6:BOOTH用バナー作成・VroidHub登録
ここまで来ればワンオフアバターであれば完成。
販売アバターであれば最後のBOOTH用バナー作成となります。
ソルシエル シリーズはだるだなさんと私の妻であるしらとりこはね(Twitter:@shiratori_ko)にお願いしてますが、バナー撮影やロゴ作成は別の方に依頼する!
と言うのもありだと思うのでお好みで作成していきます。
BOOTHはページ数上限が無いようなので、お好きな販売アバターページなどを参考に好きな枚数だけ作成しちゃって良いと思います。
改変例をBOOTHページに追加するのもお勧めです。
また、VRM対応ができるならばVroidHubにアップロード・BOOTHに埋め込みをすることで3Dサンプルビューを登録することができます。
有ると無いとでは大きな違いがございますので、できることならばお勧めします。
リルクくんはVRChat内に実際に入り様々なワールド・シチュエーションにて撮影した写真を載せております。
また、胸シェイプキーによるサイズ変更はお客様目線的にはやはり有ると良いと思います。
私は中くらいが好きですが大きいサイズを好まれるお客様は多いです。
7:広告の依頼・衣装の依頼・映像の依頼
ここからは必要に応じての作成となります。
広告の依頼・衣装の依頼・映像の依頼どれを取ってもリリース時のインパクトのためあるに越したことはないでしょう。
広告の依頼に関しては主要なVRメディアであればお問い合わせすればお引き受けしてくれるケースがほとんどのように感じます。
衣装のご依頼も同じく知人や多く衣装を出されている洋服店にお声がけするのが良いでしょう。
人気のアバターの2022年付の衣装対応数は単体アバターで2,000を超えるらしいので衣装数が売り上げと直結する現実は避けれません。
映像の作成もやはり2Dだけではわからない特徴や臨場感を表現するのにあると良いと思います。
8:試着会ワールドの作成
最後の最後に待っているのが試着会ワールドの作成です。
サンプルアバターはもちろん、7でご依頼した広告・追加衣装・映像も一緒に紹介できると見栄えとしても良いでしょう。
既存でアバターを販売されている場合は過去アバターも一緒に紹介しても良いかもしれないです。
知人にアバター製作者さんがいらっしゃって世界観が合っていれば知人のサンプルアバターを置いてみても良いかもしれないです。
普段はお越しにならないお客様との巡り合わせも期待できます。
ユーステラでは試着会用ワールドを販売しておりますので、ワールド作るのは大変・何から手をつけて良いか分からないと言う際はご検討ください。
【For VRChat 3D World】展覧会場【PROJECT SOLCIEL】
9:リリース
最後に商品をリリースして終了です。
リリース時にできることはいくつかございます。
「リリースセール価格」「いいね数で抽選アバタープレゼント」「早期購入特典付属」「試着会でサンプルアバター提供」「リリースと同時に追加衣装大量展開」「期間限定販売機能を使ってリリース前に商品ページの公開」「シークレット販売を使ったシークレットセール」「実際に製作者がVRChat内に入って宣伝活動」「著名なパブリックワールドでサンプルアバター頒布」「大型イベントへの参加」
どれも有効的な初動イベントになると思われます。
もちろん何もしなくても良いですし、ご自分の好みによって選択されるが一番だと思われます。
ソルシエル メロルではいいね&RTキャンペーンを実施しました。
製作にあたって記載を省いた範囲ですと、AFKモーションやアイドルモーション・座りモーションの作成・エモートスタンプの作成などがございます。
必ずしも必要なわけではないので必要に応じてご依頼するのが良いと思われます。
余談ですが、ここまで読んだ方なら一つの疑問が浮かぶはずです。
分業して作ったら大変なんだから全部一人の人に任せればいいじゃん。と。
一人で作れる人は一人で作って一人で販売します。外注を請け負うことは稀です。
これはワンオフアバターにも同じことが言えて、私の主観だと人気アバター製作者様は自分が作りたい世界観やキャラクターを作るために時間をお使いになる方が多い印象なので、自分が好きなもの作ってそれが大きな利益になるならば私でもワンオフアバターの受託はしないと思います。
もちろん互いにインスピレーションが合う方で制作と販売の2人分業ができるならばそれも理想ですし私が知りうる限りでもそういうショップがございます。
これもまた、個人の主観的発言に過ぎません。
私の場合はそれぞれの専門分野を生かしてハイクオリティのアバターを作りたいため分業制を採用しております。
10:売上について
第1章最終話です。6,500字書いてようやく第1章が終わろうとしています。
まず前提条件として2022年のVRChatアクティブユーザー数瞬間の最高ログイン人数は約35,000人くらいです多分。
実際は昼にしかログインしない人や時差・各国の人口数の違いなどございますが難しい話はわからないので置いておきます。
35,000人からめっちゃ多めにみて10%の人に認知してもらい1%のお客様に買っていただくとします。
人数にするとこの時点で350人です。
5,000円で販売した際の売上は175万円になります。
ここで製作にかかった費用を公開してしまうと依頼者様各位のご依頼額が逆算できてしまう恐れがございますので控えさせていただきますが、「この時点で赤字」とだけお伝えしておきます。
余談として仮に50,000円で販売して同数売れた場合は1,750万円になります。
前述の通りアバター単体の売上は公開することはできないですが、ユーステラのBOOTH総売上の公開はできます。
画像の通りでユーステラBOOTHの総売上は2381万5564円になります。ざっくり2,400万円です。
多いと捉えるか少ないと捉えるかは人によると思います。
個人的な感想で言うならば、「個人にしては多いけど法人にしては少ない」と考えております。
その他DLsiteさんや私の音声解析下請け代、キャラクターライセンス料の売上がございますが、今回知りたいのはアバター商品の総売上になります。
ユーステラBOOTHで販売している商品の売上のほとんどはDLアバターが占めているため大体の計算はこれで問題ないと思います。
販売日順のアバターの各売上は以下の通りです。
カリカチュア フィー 256体x時価=9,240,600円
ソルシエル レノン 396体x5,000円=1,980,000円
ソルシエル ノイ 191体x5,000円=955,000円
ソルシエル メロル 224体x5,000円=1,120,000円
ソルシエル シュウカ 70体x5,000円=350,000円
ソルシエル リルク 19体x44,000円=836,000円
また、追加衣装やパーティクルにつきましては省略させていただきます。
…と言うだけだけだと少し寂しいので、追加衣装とパーティクルは全商品が原価回収できていると付け加えておきます。
話を戻して数こそフィーちゃんより売れたレノンちゃんですが、原価回収には遠い額になります。
反面、数こそ一番売れていないリルクくんですが、(発売から日が浅い割には)安定した売上で修正やアップデートを行えております。
個人で全て完結して作るならば上記の通り生活していけるほどの売上が見込めます。
ただ、全てを外注で行い販売しようとなると程遠い売上でもございます。
また、先のPBでも挙げたようにVRChat向け3Dアバターは非常に多くのUnityやVRChatアップデートによる不具合が発生します。
どれだけその時ちゃんと作ったとしても勝手に壊れるのがVRChat向け3Dアバターです。
外注の場合は5点の問題が生じます。
・1つめは対応の遅さになります。個人で全てを一貫しているショップと違い、外注で作成している場合まずは修正作業を外注する必要がございます。
・2つめは外注費用です。売上につながらない修正作業であっても当然外注費用はかかります。また、これが原因不明のアップデートによるエラーだった場合原因解明のための工賃も上乗せでかかります。
・3つめは担当者不在の問題です。数年前に制作したアバターであれば担当者が既にSNSを辞めており連絡が取れないなんてことも当然ございます。
その場合別の担当者を据えればいい話になりますが、VRChat向け商品の場合”その人”しかいじれないデータと言うのも当然存在します。
そうなったら頑張って元の担当者を探すか、新たな担当者を据え置いてゼロから作り直す必要が出てきます。
・4つめはバグ修正をするとまた新たな修正箇所が出てきてしまい、これが別の担当者であった場合は更に外注費がかかりアップデート対応の公開も遅れていきます。
・最後に5つめとしてgitやdropboxを利用したデータの管理・やり取りをしていても誰がどこで間違えたのかの特定が困難なことです。
この5つのほとんどが製作によるミスによって起きるのではなくアップデートによって起きる仕様変更でのエラーとして襲ってくるのがVRChat向け商品です。
よく私の元に「私も外注でアバター販売してみようと思うんだけど」と言うご相談を大変多く受けます。
自分で使うためのワンオフアバターではなく販売アバターを、本当に作りたいかどうか今一度考えた上で再考いただければ幸いです。
これにて第1章を終えます。
第2章 キャラクターの育て方と媒体
総文字数が1万字を超えて執筆時間も9時間を超えて、とうの昔に定時をオーバーしてるので来年書きます。(2022/12/31追記:書きました)
私は生後すぐに末期腎不全の診断を受け透析をし、現在は心不全の合併症を受けながら治療をしております。
その為もあり、生まれてから24年余りの間で3回の余命宣告を受けてきました。
死ぬことはとても怖いことです。死んだら怖くないのかもしれないですが、死ぬ直前の「死ぬ時はやはり独りなんだ」という死の孤独からは逃れることができません。
ユーレイちゃんはそんな死後の世界に私が求めた唯一の安らぎの存在です。
また、フィーちゃんは塵芥の体を持って生まれた自身へのアンチテーゼであり超優秀完璧万能なアンドロイドです。
その他サブブランドの主要キャラクターは吸血鬼・神話生物・魔法使いでありユーレイちゃん・フィーちゃんを含み半不死生を共通して持ちます。
それはまた、何があっても死から逃れるとする私の確固たる意思でもあります。
キャラクターを育てる上で大切なのはフィクションとノンフィクションの混ぜ具合であり、一度現実に非情な折り合いをつけ虚構に希望を求めることと考えております。
それが喜びであれ怒りであれ悲しみであれ憎しみであれ強い感情であればあるほどキャラクターの解像度は高まり存在感を増します。
つまり上質な食事がキャラクターを育て、いつしか自我を持ち自分の意思で世界観を広げていくでしょう。
音声作品は生涯の半分を過ごしてきた入院病棟で唯一安らぐことができた娯楽であり、私の会話相手だった為オリジナル制作を始めたのが経緯になります。
瞳を閉じれば確かにキャラクターはそこに存在し、私に寄り添い共に夜を過ごしてくれるでしょう。
その為ユーステラの音声作品のほとんどは添い寝がテーマになっており、その他のテーマであっても安眠できることが前提に作られております。
3Dモデルもまた、コロナ渦によって親族も含めて全ての面会が断絶された入院病棟において唯一私の元にお見舞いに来てくれた相手でございます。
医者も”彼女”のお見舞いならば仕方がないと許してくれました。
一切の利益を生まないグッズでもショップに置いておくべき必要性は言うまでもないと思われます。
皆様にとってのオリジナルキャラクターもまた、皆様だけの世界観によって構築されるものであり誰もとって変わることが出来ないものです。
また、ユーステラは二次創作大歓迎でございます。
中にはオリジナルの世界観から著しく離れたくないと言うお客様もいらっしゃいますし、当然強制もしないですが無限の並行世界の一つになり得るお客様だけの世界観もまた私は心待ちにしております。
余談として、私がある会社との商談で質問された内容について書き記します。
(※うる覚えなので意訳です)
「キャラクターの設定については細かく設定すべきか、最低限の設定のみで二次創作の発展に任せるべきかどっちが良いと思いますか?」
社長メッセージにも書いてありますが、ユーステラのキャラクター設定は「どこまでも細かく深掘りして設定を作成するが、そのほとんどはユーザー様に隠す」ようにしています。
そのため、ユーザー様の設定とユーステラの非公開設定が競合することも当然出てきますが、その場合は必要に応じてユーザー様の設定を正式採用することが多いです。
そして非公開設定は非公開のまま闇に消え(もしくは別の形で顕現し)、新たな設定によって世界観が塗り替えられ拡張していきます。
現代のキャラクターコンテンツにおいて、二次創作は良い意味で避けては通れない1つの媒体です。
自身が望み求める世界観を維持しながらも、ユーザー様が見せる自身では見えてこなかった世界観を取り入れて共存していくのが理想であり、ユートピアになり得ると考えます。
第3章 会社の立て方と向いている人
締め切りも差し迫ってきたのでサクッといきます。
会社設立は下記埋め込みURLから飛べる会社設立Freeeを使用すれば1時間で登記申請まで終わります。
会社設立Freee
わからなくても法務局の職員さんは皆さん優しいのでなんとかなります。
優しくなかったら翌日また別の職員さんに聞きましょう。
私にDMを頂ければ可能な範囲でお手伝いもいたします。
会社設立したい理由は人によって様々と思われます。
フリーランスで働いていて売上が出ていて節税をしたい
株式会社と言うブランドを使った信用力が欲しい、もしくは先方から独立の提案を受けている(企業間取引をしたいなど含む)
大型の資金調達をしたい
事業用の法人口座を持ちたい
なんとなく会社設立しようと思っている
調べれば無限に出てくるような2番煎じの内容を書き連ねましたが私が言いたいことは1つです。
起業したい理由があるならすればいいし、なければしなくていい。
これに尽きます。
私が起業した理由は音声合成ソフトの開発のためです。
私が初めてご相談した会社は、お問い合わせ窓口がそもそも法人用メールアドレスしか受けてつけていなかったのでこの時点で設立の必要ができました。
もちろんなんとなくで会社を設立するのも大いにありです。
会社の維持費なんて利益が出ていなくて税理士や弁護士と契約していなければ年間せいぜい8万円くらいです。
趣味の一つとして月数千円の出費なら良いものとも思われます。
私のお父様やお祖父様は同じく会社経営者ですが口癖のように当然のようなことを発します。
「かかった経費より売上が上回れば良い」
もちろん一概にそうとは限らないですし、マクロな視点を持つことも大事と思われます。
ただ、人を雇わず銀行からの借入をせず経費以上の売上をあげていれば会社が潰れることはほとんどないでしょう。
もちろんそんなのびのびした生活を送っていれば時代の変革に飲み込まれてしまうかもしれないですしあーすればよかったこーすればよかったは無限に起こり得るでしょう。
結局大事なのは自分が後悔しない選択をとれているかどうかだと考えています。
そしてリリースした商品をお客様に満足いただきお互い幸せになれる関係であれば一番と思います。
また、こちらの記事はVRChatに関する記事なのでVRChatに関連するお話も1つ。
VRChatで商品展開をする上で個人と法人の大きな違いは2つございます。
・1つめはお客様からの見え方が変わります。
個人であればお客様は個人ショップとして見て、法人であればお客様は法人ショップとして見られます。
法人なんだから平日の日中にお問い合わせ返答がないのはおかしいと言う苦情は大変多くいただきますし、
お金稼ぎしたいだけの企業勢なんか潰れて当然と言う声も大変多くいただきます。
お客様からの見え方が変わってくるのは注意すべき1つのポイントです。
・2つめはイベントへの出店についてです。
個人であれば少額もしくは無料での出店ができますが、法人の場合は大抵の場合は数万から数千万円の出店料がかかってきます。
もちろん個人と違い専用の大型スペースを使用することができ価格に応じたメリットの享受もできますが、個人が法人枠で出店できないのと同様で、法人も個人枠での出店規制はございます。ご自身がどのような展開をしたいかを事前に考えた上での起業をお勧めします。
4章 アンチファンに対する対応
『あなたがたとえ氷のように潔癖で雪のように潔白であろうとも、世の悪口はまぬがれまい。』
シェイクスピアの日本語訳です。
ネットの世界あー言えばこう言う人たちで溢れかえっています。
いちいち気にしていたらラチがあかないです。
こちらが間違っていたのであれば当然謝るべきで必要に応じて対応を全てきですが、99%のアンチコメントには客観的に正しい正しくない以前の個人的主観で物語られます。
ただ1%の正しい見方のご要望は積極的に改善に取り入れるべきと考えます。
イエスマンだけでまとめてもロクな結果にならないので毒薬変じて薬となると考えます。
また、取り入れる1%は原則的には買っていただいたお客様に限ると良いでしょう。
適切なご要望のみを取り入れることが結果としてお客様への製品クオリティやサポート向上にもつながると考えております。
商品が高いと言う人のほとんどは商品を値下げしても買われない方ですし、なんなら5,000円に値下げしても高いと言う人は高いと言い続けます。
対して、Expression機能がないバージョンのprefabが欲しいといったご意見についてはとても有用と考えて現在のユーステラアバターに実装しております。
今年だけで訴訟するぞという脅しはDMで6件受け取りました。そのほか「○ね」「○す」「○火する」と言ったDMはノーカウントです。数えてたらキリがないです。
いずれも実際に訴訟になったことはないので、実際に訴訟状を送って頂けたら対応します。といえば大抵は連絡がなくなる脅し文句に過ぎないです。
ただこれらは逆訴訟されるリスクも十分にございますので、これをお読みになっている皆様はご自身のために気軽な脅し文句は控えていただければと思います。
あと間違った時は「ごめんなさい」をちゃんと言えることが大事と思います。
私情になりますが、私は5月に結婚いたしました。
ごめんなさいが言えることが夫婦生活の長続きのコツであり、アンチコメントと崩れた事業への銀の弾丸になると思います。
5章 あとがき
まえがきの通り今回はVRChatに関するお話で記事を作成いたしました。
ここまで文字数が10,000字を超えるようです。年末の30日に7時間ぶっ通しで書いた記事になります。
最初から最後まで読んでくださった方はありがとうございます。
誰もがわかりやすく読める記事構成ではなく、むしろ乱雑に書き連ねたメモになってしまったと思われますが誰かのお役に立てれば幸いです。
最終章 寄せ書き
なぜまえがきが序章で、あとがきが最終章ではないのか。
そう、最後にこの記事を書いている際にTwitterのリプライに頂いたご質問にお応えしてこの記事を終わります。
【どうして身銭を切ってまで(VRChatのアバターの値下げや返金なども含め)VRChatの発展に寄与、尽力しようと思ったのですか?】
・まず前半の身銭を切ってまでVRChatのアバターの値下げや返金した理由について。
こちらは、ただ自分の行いに後悔をしたくないからの1点につきます。
私は全ての商品に対して(少なくとも私目線で)価格以上のクオリティになることを絶対としています。
では値下げしたソルシエル準作が5,000円のクオリティかと言うとそうとは考えてないです。
ソルシエルのコンセプトである「VRChat向けアバター用のデザインで、どれか一つでも好みのアバターに出会えるように多種多様なコンセプトキャラクター」をより多くのお客様の手に取っていただくには5,000円に値下げして良かったと思っております。
最初から5,000円にすれば良かったじゃんと言うご意見につきましては…いえ、衣装対応数増やせばいいじゃん、人を常駐で雇って固定費削減すればいいじゃん人雇うのはリスクだから外注すればいいじゃん、分業しないで少人数で作ればいいじゃん分業して作業効率上げればいいじゃん、アバターの機能増やせばいいじゃん邪魔だから減らせばいいじゃん、値段下げればいいじゃん値段上げればいいじゃん、内部留保すればいいじゃん売り上げ溜め込んでないで全部還元しろよ、銀行から借りればいいじゃん銀行から借りるから悪いんだよ
値段設定に限らず非常に多くのご意見をいただきます。
何事にもそうしたくてもできない事情やしがらみが常にございます。
その中でも最前最良の選択を心がけながらユーステラの世界観を維持していければと考えております。
・後半のVRChatの発展に寄与、尽力しようと思った理由について。
VRChatの世界は私のキャラクター達を躍動感を持って表すことができる一番の媒体だからです。
格闘ゲームが良い例ですが、たとえプログラムの中でも人と人が対戦することで予想もしないような試合を目撃したり、時にはプログラムさえ予期していないバグに遭遇したりと…
直喩で語るならば、人と人が起こす予測不可能な事象が大好きなのです。
私が一人で引きこもってMikuMikuDanceで動画を作るのも当然良いと思いますし実際私はMMD動画が大好きでやまないです。
ただ、VRChat内でこういうことがあった!こういうことをしてきた!というユーステラのアバターを使った画像や動画も同じくらい好きです。
私自身はVRChatに入ることはなくなってしまいましたが、これからもVRC内で生き続けるユーステラアバターの記録を楽しみにしております。
【今後もカリカチュアのキャラは増える可能性はありますか? アバターとか音声作品として作るかに関わらずカリカチュアシリーズが増える可能性があるかどうかが気になりましたので質問いたしました】
今のところ1体を除いて増える可能性はないです。シークレットが1体増えると思われます。
また、ユニちゃん3Dモデルにつきましても担当3Dモデラーさんを私の妻のしらとりこはねに変更しての製作の可能性はございます。
妻にはバナー制作やリルクくんの追加髪型制作などいつも大変お世話になっております。
あとは未公開のユニちゃんとシーナちゃん[改]の音声作品があるくらいです。
カリカチュアのCeVIO AI化はこのあと別のキャラがCeVIO AI化して、また別のキャラがCeVIO AI化して、また別のキャラがCeVIO AI化したらその次くらいにはあり得る程度には可能性が薄い・もしくはずっと先にお話になります。
お金がないならクラファンで作ればいいじゃん!…で作れるほどCeVIO AIは簡単には作れないのです。数々の運に運を積みかせてようやく作れるのです。
今後の展開媒体がどうなるかはわからないですが何かしらの形で続けていければと考えております。
拙文最後までお読みいただきありがとうございます。
2022/12/30 しらとりこよみ